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コラボレーション

北嶋竜樹(きたじま・りゅうじゅ) 1983年大阪生まれ。27歳でグラフィックデザインの仕事から食の世界へ。都内のいくつかのレストランで経験を積んだのち、2018年、麻布十番にあるミシュラン一つ星レストラン「スブリム」(現・銀座ラルジャン) で副料理長を務める。2020年、拠点を京都へ移す。2021年、インスタレーションを用いた食の新しい在り方を表現するプロジェクト「neutral」を始動。

東京の数々の有名レストランで経験を積んだのち、2020年に拠点を京都へ移し、現在は食を用いたインスタレーション作品を制作するプロジェクト「neutral」を行っている北嶋竜樹さん。食べるという行為を通して体の内側から湧き上がってくる感覚を体験してもらうなど、食の新たな在り方や価値を提案し続けています。今回「どうバランスブースター フォーブラッド」を手がけてくださった北嶋さんに、モノづくりへのこだわりや大切にしていることについて語っていただきました。

 「気づきのきっかけ」を提供したい

単に「美味しい」と感じるだけでなく、それが心や身体のはたらきにどのように作用するのかを自分の内側から体感することで、より深い部分で自分自身の健康に意識を向けていただく、そんな食体験をクリエーションしています。
もともとパートナーがアーユルヴェーダのカウンセラーで、いずれ何か一緒にやりたいなと考えていたのですが、たまたまいろんなタイミングが重なって。半年の構想期間を経て、2021年の1月からスタートしました。
僕たち人間の身体は食べたものでできているので、毎日、何を食べるかはとても大事です。健康的であること、そして、美味しいこと。この2つが満たされているのが理想だと考えます。にもかかわらず、世の中の多くの飲食店は口の中の喜びを追求することに偏りがちです。一方、身体によい食事を提供する店は健康に意識が向きすぎて、内容がストイックすぎることも。美味しくて、なおかつ、口にするものが自分の身体をつくっているということに意識が向くような食体験を提供したいという思いを形にしたのが「neutral」です。
「neutral」が提供しているのは、「気づきのきっかけ」。こうしたほうが健康にいいとか、食を通してこういうことを感じてほしいといったメッセージを発信することはしていません。というのも、自分で気づかないと、何も変わらないと思うから。僕たちが提供する体験から、何かを持ち帰ってもらう。その「何か」が何なのかは僕たちにもわからないし、僕らがこうありたいと思っているものでなくてもいいんです。それが多様性というものだし、多様性があったほうが世の中は面白くなると思います。

 二元論ではなく、交ざりあうのが東洋思想

「neutral」の考え方のベースにあるのは東洋思想です。西洋思想が天と地、光と闇、善と悪といった二元論に基づいているのに対し、東洋思想ではそれぞれの要素が互いに交ざりあい、影響し合っていると考えます。例えば、西洋では虹の色は7色とされているけれど、東洋の場合は7色のそれぞれの境界にもグラデーションで色が存在することを思想として伝えている、と言えばわかりやすいでしょうか。
どちらも在り方、捉え方が違うというだけなので、僕たちは西洋思想を否定しているわけではありません。それぞれ、必要なものだと思っています。ただ、今の日本の社会のありようは西洋思想の影響が大きいので、西洋思想だけでなく東洋思想も同じように大事だよ、ということを伝えるために、「neutral」では東洋思想を取り入れています。
「どう」も東洋思想がベースにあり、お互いに作っているものや表現方法は異なるけれど、根底にあるものが似ていると感じました。プロデューサーの松尾さんの考え方には非常に共感していますし、ここまで圧倒的に美しい世界観をもってモノづくりに取り組まれる人はなかなかいないのではないでしょうか。ドリンクの開発は経験したことのない分野でしたが、とても興味深く、「どうバランスブースター フォーブラッド」のお話をいただいたときは何の迷いもなく二つ返事でお受けしました。

 徹底した下調べからヒントを導き出す

僕のモノづくりのプロセスは、下調べをする時間がいちばん長いんです。とにかく本を読んで、調べます。食材の歴史や産地、栄養素などはもちろん、何の役に立つかわからないような情報まで、あれやこれやと紐解いていくと、その先にヒントが見つかることが多い。何でもいいから試しに作ってみよう、というやり方もあるとは思いますが、僕は食べ物を無駄にしたくないんです。食材の特性を考えながら合いそうなものを構築するまでに時間はかかりますが、その時点で味の想像もできているので、試作から先は微調整する程度で済みます。 もうひとつ、僕のモノづくりの特徴として、自分を打ち出さないということがあります。僕はアーユルヴェーダの面から見てもサポート役として他者を支える性質が強く、モノづくりに関しても、食を通して自分を表現したいという思いは一切ないんです。今回の「どうバランスブースター フォーブラッド」も、「どう」の世界に寄り添うような気持ちでつくりました。

 日常で手にするものが人にも地球にも優しい世界を

料理の主役は作り手ではなく、あくまで料理そのものだと僕は考えます。極論を言えば、僕が作っているということが誰にもわからなくていいと思っています。今は「どこの誰が作った野菜だから安心」みたいなことが価値としてうたわれていますが、それって本来おかしな話で、そんな表示に従わないと安心なものが手に入らないこと自体が歪んでいるんです。昔はどこの誰が作ろうが野菜は美味しかったし、自然のままに育った野菜ならば安心して食べられたはず。つまり、人間が介入することで、おかしくなっているんです。そういう意味でも、僕は作り手のエゴイズムみたいなものは持たないようにしています。

将来的に目指すのは、日常で何気なく手に取ったものが地球の環境のために作られていて、健康にもいい、という世の中。そのためには、健康になるための情報をばら撒く必要はなくて、ファストフードが当たり前のようにプラントベースだったりする、そんな状態になればいいんです。身体が健やかになれば心も穏やかになって、結果的に世の中は平和になっていくでしょう。

歴史を紐解くと、今当然のようにあるものが、必要ではなかった時代があったわけです。例えば、日本で貨幣経済が始まったのは奈良時代。その頃はおそらく、物流などはまったく整っていなかったでしょうけれど、人々が軽やかに生きていたのではないかと想像します。西洋占星術では「風の時代」に突入したといわれていますが、これからの時代に目指すべき世の中は、きっとその頃の空気に近いのではないかと、僕はそんなふうに思っています。